クルド内紛とアメリカ内政干渉
去年旅行中イランからトルコに陸路で抜けた。トルコ東部ではクルド人(クルド労働者党=PKK)による外国人ツーリスト誘拐事件が起きていて心配だったが,何事もなかった。クルド人の町にも滞在したが,親切な人が多く,ついつい予定よりも長居してしまったぐらいだ。当時はクルド問題といえば,トルコ,イラクでのクルド人迫害、あるいはクルド独立問題だと思っていた。
今起こっているのは,クルド内紛である。湾岸戦争後イラク北部はイラクの主権が及ばない空白地帯になっていたためクルド人同士の争いが激化し、クルド民主党(KDP)がかつての敵イラク政府に助けを求め,クルド愛国同盟(PUK)と争い、イラク領内から追い出しそうな勢いだという。PUKはイランの援助を受けているとのことなので,消滅することはないだろうし、クルドと対立しているトルコ,イラク,イランともクルド内紛が終わらないことを願っているだろうから,しばらくは続きそうだ。旧ユーゴのような状態にならないことを祈るのみだ。
イラクのクルド人(PUK)迫害に対してアメリカは「制裁」を加えたが,安保理ではアメリカ支持は少数に留まった。イラクへの内政介入だという意見の他,大統領選に向けたクリントンのパフォーマンスだという意見も聞かれた(と,批判するフランスも人気取りのためのアメリカ批判ともとれるが)。また、以前も行って失敗したが,フセイン暗殺のためCIAの工作員をクルド人組織のなかに送り込んでいたことが明らかになってきた。イラクに捕らえられたCIAの工作員もいるようだ。
安保理決議がないままのアメリカだけの判断による制裁(アメリカが根拠とする以前の決議は迫害されたクルド人への人道的救援努力で,とても軍事行動が含まれているとは思われない。また,米軍が破壊したのは南部のレーダー施設で直接北部のクルド人とは関係がない。「救援努力」ではなくアメリカによる武力「制裁」である。)やCIAによるフセイン暗殺は許されることではない。立場を変えれば,イラクはアメリカを武力制裁し、ブッシュやクリントンを殺したいと思っているのではないか。アメリカは中南米だけではなく,アジアでも自己中心的な行動が目立ってきた。
やはり軍事行動には安保理決議が必要だった。内政不干渉の立場から自国内に民族問題を抱えるロシア(チェチェン問題),中国(チベット問題)辺りが拒否権を発動したかもしれないが、その場合PUKには気の毒だが,どの国も手を出すべきではなかった。実際手を出さない場合がほとんどだし(現在世界の紛争は80という数字もある),クルドであるKDPも当然それを望んでいた。
アメリカが介入しなかった場合よりも,クリントンは支持率を上げ,フセインは暴れん坊振りを見せつけて存在感を示し,フランス,ロシアは反対したことにより大国としての面子を保ち、1番損したのは経済制裁解除が送れたイラク国民だったのかも。(960910)