沖縄県民投票の結果に対する見解と
整備縮小の現実的可能性
沖縄県民投票の結果は(米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しの)賛成が89%,投票率が60%だった。朝日新聞は「米軍基地の重圧にあえいできた沖縄の人々の意志が示された」とした。
賛成率が高いのは投票前から明らかで,どれくらいの投票率になるかに注目が集まっていたのに,朝日新聞は賛成率のみ大きく報じた。6月の県議選の投票率66%を越えるかどうかが一応の目安とされていたが,それを下回ったことに関してはあまり述べられていない。投票率が高かったならば投票率にも多く言及していたことが予想される。全く客観的な報道というものは論理的に不可能だが,数年前から用意されていたような「米軍基地の重圧にあえいできた沖縄の人々の意志が示された」という結論に適合するように投票結果を報じるのは誤りである。一般紙は「どれも同じような作りで,もっと主張があるべきだ」との意見(このことに関しては別の機会に考えてみたい)を数年前よく見かけたが,客観報道に見せかけた主観報道は読者を裏切るものである。
話を元に戻して,投票結果はともかく,沖縄問題を本土の人に考えさせたという点で成功だったと考えたい。その意味では直前に行われた高校生による投票も意味があった。米兵に対して暴力を振るったり、米軍施設にペンキを投げつけるなどという逆効果のありがちな事件が起きなくてよかった(報道されなかっただけかもしれないが)。
現実的な話に戻すと、具体的に沖縄の米兵はどういう役割を担っているのかという記事を読んだ。すると結論は大部分は沖縄にいる理由がないどころか、かえって軍事的に弊害があるとの結論だった。
沖縄には第3海兵師団を中心とする海兵1万8000人(沖縄米兵力の63%,基地の75%)がいてこの大部分が沖縄にいる理由は無いというのだ。海兵隊というのは揚陸艦に乗り込んで上陸作戦する部隊で,日本防衛に直接関係しない。また米軍の揚陸艦は佐世保に4隻あるが,これは第3海兵師団とは別組織の第31海兵遠征隊を乗せるためのもの。では沖縄の海兵隊を運ぶ揚陸艦がどこから来るのかといえばサンディエゴからだというのだ。しかも最精鋭の第1海兵部隊を45日(ペルシャ湾,朝鮮半島の場合)かけて運んだ後だというのだ。それより現実的なのは本国からの大型輸送機で運ぶことだが,それなら兵隊も本土にいた方が効率的である。
抑止力のためにいるという考えもある。しかし,対象として考えられる北朝鮮が韓国軍だけではなく米陸軍第8軍(32000人)をも無視して戦争を仕掛けるような(狂った)状況では,実質的に戦闘力のない沖縄の第3海兵師団が抑止力になるとは考えられない。
中国と台湾との紛争でも問題となるのは制空,制海権で海兵隊の出番はない。それ以前に,繰り返しになるが揚陸艦がないのだ。
訓練地として適さないのは明らかだろう。米軍だって国道越え実弾射撃訓練など嫌だろう。あとは瓶のふた論だろうか。それとも思いやり予算がほしいのだろうか。金の問題だとすれば経済状態が悪いため米兵が増えるのを望んでいるハワイに移す方が嘉手納への統合よりは多分安くつくらしい。地位協定に反しての思いやり予算や地主への地代(これは地位協定に反しない)を出しているのだし、誰も嘉手納への統合にかかる費用(日本もち)を問題にしなかったのだし,金で済む話ならば時限立法でもつくり米軍に立ち退き料を払ってでも出ていってもらえばいいのだ。沖縄の人は金では嫌だと主張しているのだ。
参考:アエラ1996/9/16号、朝日新聞
opinion1<追加>(1997/5/18)
上記と同様の意見が他のメディアでも見られたので要約して追加しておきます。
マイケル=オハンロン研究員(米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所)(朝日新聞1997/5)
軍事的意義 海兵隊は1万7千人が沖縄に常駐しているが、部b隊を運ぶ揚陸艦は佐世保基地に3隻しかないので朝鮮半島有事の際に緊急展開できるのは2000人程度。台湾海峡やマラッカ海峡の危機に必要なのは地上軍ではなく海兵隊の洋上パトロール部隊や航空部隊。
経済的意義 思いやり予算はなくなるが米国内で閉鎖予定の基地を使えば総支出の規模は今とそう変わらない。
政治的意義 徴兵拒否の経験を持つクリントン大統領は軍に相当気兼ねしている。また削減に傾けば国防強化を主張する共和党主導の議会で軟弱との印象を招きかねない。
ベストな代替案 沖縄海兵隊を削減する代わりに有事駐留を認める。
マイク=モチヅキ(ブルッキングス研究所)(ニューズウィーク1997/5/21)
朝鮮半島で戦争が起きた場合、在沖縄海兵隊の役割は38度線以北に上陸すること。その際はまず援軍の投入が必要になる。 (960909)